鋼の錬金術師 第35話『この国のかたち』

 5クールと聞いた途端、このノロノロと進んで行くお話を見る目が変わりました(笑) 追い求めて見つけたと思った瞬間それはスルリと指の間から零れ落ち、見上げればそれはもう遥か彼方へ。歯を食いしばり疲れた足にムチを入れもう一度歩き始める。
 この徒労とも取れる行為を繰り返し繰り返し描くことで、画面の中と外で太い絆が結ばれるのだと思います。ですからそこは急がず慌てず、ゆっくりと時間をかけて描いていただきたいものでございますが、「尺」を気にするあまり「せっかち」になっておりました。でももう気にしなくても良いようですので腰を据えてお付き合いいたしましょう。
 さてエドとアルは国全体を覆う錬成陣の存在に気づき、改めて自分たちが相手をしている敵の巨大さを知ることになりましたが、同時に味方も手に入れた、と。そして最北の地で嵐の予感を漂わせながら以下次週と、「つなぎ」のエピソードといたしましても無駄はなく上手く作られていたと存じます。
 上のエントリーのような状態だった為メソメソしながら視聴しておりましたが、ふと「これが富野監督だったら」と埒もないことを考えてしまいました。
 本作に限ったことではないのですが、最近のアニメに登場するキャラは「人間としての生々しさ」ですとか「人間の理不尽さ」「欲深さ」「業」のようなものが淡白と申しますか、あまり描かれることがなくなったなぁ、と。「こうきたからこう返す」と決まりきったリアクションが多いように思えてしまいました。
 なんでこんなことを考えたかと胸に手を当てたところ、オリヴィエの反応が可愛かったからでしょうか(笑) 「富野さんならここは女の醜悪さを見せたよな」と。で、もう一度胸に手を当てますと、本作は「理不尽さ」以外はよく描けておりますから、かえって「そこを深く描くことを避けている」ように感じたのだと思います。
 ま、日曜の夕方に「人としての醜さ」などというものをこれ以上見たいのか?と聞かれますと全力で「No!」と叫ぶでしょうが、…う〜んどうなんでしょうね。まだまだ先がございますから色々期待して待つことにいたしましょう。