化物語 第五話『まよいマイマイ 其ノ參』

まよいマイマイ編完結。終了直後の素直な感想は
やられた(笑)
この一語に尽きるかと存じます。
 小説を読んだり映画を観たりする行為のどこかに「騙される」楽しみというものがあると存じます。少なくとも私はそうです。創作者の紡ぎだす物語というものは基本的に「作り物」ですから、それは「嘘」と極めて近しいものだと考えます。
 であれば上手に騙していただきた、と。さらに私は積極的に「騙して(ハート)」という立場を取りますから、作者にとっては「カモ」ともいえるでしょう(笑)
 基本構造は「シックスセンス」をひっくり返したもので、あの映画でブルース・ウィリスが演じていた医者の立場を「八九寺真宵」に置き換えて・・・といっても、この手の手法は昔から日本の怪談では見受けることがありましたし、語り部が犯人という推理小説もございますから、特段あの映画のオリジナルアイデアということではないと存じます。当然俗に言う「パクリ」などではないと考えております。
 そうした基礎知識は持っていても「騙された」というのは、先週自分で書いた「ノイズ」云々に惑わされたという事なんだよなぁ・・・、恥ずかしい(笑)
 自己弁護するわけではありませんが、真宵と暦、暦とひたぎの溢れるような会話の内容を聞き漏らすまいと思えば思うほど、真宵に取り付いた(と、思っていた)怪異の正体から注意が逸れてしまうという実に見事な煙幕の張り方で、これは声優さんを含めたスタッフの勝利だと思うのですよ。
  辿り着いた真宵。そこに至る道は「暦とひたぎ」には見えていたけれど「真宵」には見えなかった。しかし辿り着いた先にあったものは「暦とひたぎ」にはただの空き地だったが「真宵」には帰り着く「家」が見えていた、ということでしょうか。「見えることが正しいのでも、見えないことが間違っている訳でもない」というオチ。これはこの作品を観る上でも「柔軟な思考を持て」ということかもしれません。
 ・・・そうはいってもこれこそが「ノイズ」に騙されて導いた答えかもしれませんね。今回の本当の肝は「戦場ヶ原蕩れ」だったかもしれませんし、ツンデレ女の告白だったかもしれませんし(笑) もしかすると読者や視聴者こそ「まよいマイマイ」に出逢ってしまった被害者なのかもしれません。そして迷宮の旅は続く。