テイルズ オブ ジ アビス♯26(最終回)『新たな世界』

 最終回でしたが「帰ってきたルークはアッシュと融合したルークだったのか」「何故帰ってくるのに2年もかかったのか」という疑問が残ってしまいました。原作のゲームをプレイした人でしたら理解できる描写だったのでしょうか。
 最終回は大団円でしたし、それなりの盛り上がりもございましたので「良かった」と書けないこともありませんが、全体の印象といたしましては残念ながら先週書いた通り「生煮え」といったところでございました。
「人(神?)の預言通りに生き方を決められたくない」
 物語の発端はヴァンがこの世の不条理に対する抵抗と、人として運命に立ち向かう決意から始まりました。この「自分で運命を切り開く」という主題は古くからございますし、現在でも形を変え語られているものでございます。本作はそれに正面から切り込んだ訳でございますし、それ自体は失敗してはいなかったと思います。
 しかしながら「運命」にもてあそばれるキャラに気を使いすぎて、主題の方がぼやけていたような印象だったことが残念でございました。キャラ優先主義で作品を作る事を否定はいたしませんが、それならそれでもっとキャラの魅力を前面に押し出して頂きたかったところでございます。
 「ミュウ」というキャラは可愛らしいデザインでありますが、「聖獣チーグル族」の一員で、ソーサラーリングの力で強力な炎を吐くことができるといった設定もあるのですが、結局見せ場らしいところがございませんでした。CV「丸山美紀」嬢の熱演もあって「売れそう」なキャラだっただけに実に勿体無いことでございます(笑)
 他のキャラも(「敵・味方」の別なく)各自が抱えた複雑な生い立ちや特技、因縁というものがございましたし、それらは単独のエピソードとしては大層魅力的にも思えたのですが、物語の中で効果的に連動していたかと考えますと残念ながらあまり上手くいってなかったと思えてしまいました。
 「通り一遍」という言葉がございますが、各々のキャラの活躍を拝見してきて最後に思い浮かんだ感想はそういうことでした。もう少し踏み込んだ描写が、もう少しキャラの内面描写があったのなら・・・、そう考えますと「惜しい」としか書きようがございません。
 原作に忠実に作らなければならないという制約があったことは想像できますが、出来た上で書きますと「登場人物の整理」か「尺の延長」が必要だったのかもしれません。そうであればキャラの内面描写にかけられる時間が増えたことでしょう。・・・何れにしても制作現場レベルでなんとかできたことではありませんね。
 重厚なテーマを選び、魅力的なキャラが登場し、作画も一定のレベルを保ち、個々のエピソードでは「熱く」なることも出来たのに、全体としての印象が「薄い」のは本当に残念でございました。どこぞの制作会社のように「タイトルは原作通り、中身は別物」という位思い切れれば良かったのですが、今のサンライズはそんな馬鹿な真似はしませんからこうした平均点の取れるアニメを作るのでしょうと書き残しておきます。
 ただ半年間楽しませて頂いた事も事実ですから、それも併せて書いておかなければ失礼ですね。ご苦労様でした。