びんちょうタン四巻(最終巻)

びんちょうタン 4巻 (BLADE COMICS)

びんちょうタン 4巻 (BLADE COMICS)

 とうとうこの愛すべきキャラもこれで見納めでございます。壱巻冒頭で「おめでと…、おめでとう わたし…」とひとりで祝っていた誕生日を、この巻の最後では大勢の友だちから「びんちょうタン、お誕生日おめでとう!」と祝福してもらえて本当によかった。作者の江草さんがこの物語を締めるにあたって、この場面を用意されたことに一読者として単純に感動いたしました。
 四巻は最終巻らしく「クヌギたん」「れんタン」「ちくタン」のエピソードもしっかり描かれていて、それぞれのキャラに深みを増しておりました。まだ多くのエピソードを用意できそうですし、謎も残されて(「ウバメガ」さんの正体ですとか、時々出演していた「幻獣」のようなものの役割など)おりましたから、これで最後なのは本当に残念でございます。
 わずか四巻という短い作品なのですが、そこに詰め込まれた「想い」は大変濃厚で、どのお話も胸に染み込んでまいりました。この「絵」で好き嫌いは分かれるのかもしれませんが(事実私も「アニメ」を観るまでは敬遠しておりました)、この絵柄はこの作品を描くために、というより「想い」を伝えるために最適な「絵」だったのだと今なら確信を持って書けます。
 辛かったことや悲しかったこと、小さな楽しみや微笑ましい喜び。日常にありふれた様々な出来事を大げさに描くことを意識的に避け、淡々と、ただ淡々と描くことで「描かれていない部分」を読者の情緒で埋めさせるという手法を使う場合、過度な情報は障害になる可能性の方が高いですからこの「絵」の密度は絶妙だと思う次第でございます。
 物語としては「もっと読みたい!」と思わない訳ではございません。ただ、悲しいこと辛いことはこれからも沢山あるでしょうが、大切なお友だちが増えたびんちょうタンはもう「寂しさ」を感じることはないでしょう。ですからこの先は各自がそれぞれの「びんちょうタン」のその後に思いを馳せるというのが正しい読了の姿勢なのかもしれません。