蟲師 第3話『柔らかい角』

 静寂のお話。私の子供の頃は冬の午後九時にもなりますと、このエピソードと同じように音のない世界だったことを思い出しました。今はこの時間でも酔っ払いが出す声も、車の通る音も途切れる事はないのですが、はてさてどちらの時代が幸せだったことかと考えずにはおられません。「蟲」も姿を消してしまうわけですね。
 それでなくとも静かなアニメーションなのに、今回は「音」がテーマでより一層静かでございました。このエピソードは漫画で読んだのですが、漫画の場合台詞や効果音はもちろんの事、BGMも読んでいる人間が頭の中で再生するしかありませんからこうしたエピソードとは相性がよろしいわけでございます。しかし声優さんが声を発し、効果音が入れられBGMが鳴っていることが当然のアニメとはあまり相性が良いとは思いません。
 単に「音」を消したり、音量を下げるといった小手先の演出ですとこのエピソード自体を破壊しかねないと思いましたが、杞憂でございました。しっとりとした中にも的確な効果を用い素敵なお話に仕上がっておりました。月曜日の夜は幸せな時間が流れてくれます。