『flat』1巻 青桐ナツ著

flat (1) (BLADE COMICS)

flat (1) (BLADE COMICS)

 雑誌もほとんど買わなくなって久しいですし、単行本にしても書店では「シュリンク包装」というのですか、ビニールのようなもので包み込まれて立ち読みもできませんと、私のように中身を確認してからでないと決して購入に踏み切れない「チキン」はどんどん購入点数が減ってしまいます。書店側の言い分もごもっともで、私だって人の手垢で汚れたような本は買いたくありませんが、さりとて表紙買いで「当たり」だけを引く自信もございませんからなんとか折り合いをつくとよろしいのですが。
 「ワンピース」や「H×H」のようにベストセラーが約束された本ですと「試し読み」用の本が置いてあるのですが、そもそも2・3冊しか仕入れていないような本の場合そうした「試し本」がないことが普通でございます。この本も私が入った書店には4冊しか展示されておりませんでしたが、幸運にもそのうちの一冊が「試し読み可」でございましたので手にとって拝見いたしました。
 「絵」は決して上手とはいえません。キャラの描き分けも表情も背景も「寂しい」と書いていいと思うレベルでございます。が、「秋」の表情の変化だけは見事でございます。それだけでも一見の価値はあると思いますが、実はその表情を素晴らしいと感じさせる「心」の描き方が上手いからあの絵でもこちらの心を打つのだと気がつきました。
 漫画の絵は作品を構成する数多くのパーツのひとつでしかありません。上手い方が上等かといえばそんなことはなく、絵が上手くてもお話がダメだったり構図が変だったりする作品もございます。この作品は今のところ絵については「発展途上」ですが、作品としては心に響く素敵なものをいくつも抱えていると思いました。
 ・・・3ヶ月遅れで書くことではないか(笑)