キャシャーンSins 第5話『月という名の太陽を殺した男』

 「死を受け入れ静かに最後を迎えるつもりでいたが、一縷の望みが現れた途端悟ることを放棄してしまった」「死を目前にして己の人生を振り返る」「本当は誰よりも他者と繋がりを持ちたいのに、その手段を持たないものの悲劇と一筋の光」ときまして再びリューズの前に立つキャシャーン。本当であれば経験した事からキャシャーンは自分の言葉を持たなければならないと思いますし、その言葉でリューズの問いになにかしらの答えを用意しているだろうと考えたのですが残念ながらそうではありませんでした。
 相変わらず己の出自に苦悩してしまうキャシャーン。その中で最悪な解決策を提案します。「私を殺しなさい」と。しかしキャシャーンには死ぬ事すら許されていないようでございます。この辺の描写を観ていますと、大昔に読んだ「苦るしむ民を救うために放浪する坊様のお話」を思い出したりいたしました。それと生住異滅でしょうか。西洋的宗教観ではなく極めて日本的な宗教観による物語、いえ、そちらの知識ございませんから軽々しいことは書けませんが。
 最後に出てきた黒いキャシャーン「ディオ」はキャシャーンと「陰陽」「良心と本能」の関係なのでしょう。ありきたりな展開と書けばその通りなのですが、本作の脚本構成の小林靖子さんがなんの捻りも無い物語を書かれるはずもないと確信しておりますので、今に「あっ!」と驚くような展開になることを期待しております。
 そして久しぶりの「リンゴ」は相変わらず可愛く描かれていておりました。殺伐とした空気の本作におい唯一の救いでございます。きっとスタッフ各位も同じ想いなのでしょう、ひとつひとつの何気ない仕草の作画に「愛」を感じずにはおられませんでした。
 ・・・それにしても、確かにリューズの「言葉」は必要な部分だったと思うのですが、セリフ多過ぎだったかもしれません。