機動戦士ガンダムOO 2ndシーズン ♯05『故国燃ゆ』

 今回は「戦争をするお前らは許さない、お前たちのせいで多くの人間が不幸になるのだ」と主張していた沙慈くんが、自分の手で多くの人間を不幸にしてしまったことを目の当たりにして慟哭したお話でございました。制作者の容赦の無さは半端ではありませんが、そもそも戦争に無関係でいられる人間などおりませんから遅かれ早かれこうした事態に巻き込まれることは予想されたことでした。
 もっとも虐殺された大部分の人間は「反連邦政府武装組織カタロン」の戦闘員で、しかも戦時であるということを考慮すれば実は沙慈が心を痛める必要は無いわけですし、あそこにいた「非戦闘員」の子供たちにしても何時襲われるか分からない拠点に回収している時点で責任はカタロンにあるわけでございますから、沙慈がそこまで責任を感じる必要はないよね、と感じたりいたしました。
 そこら辺のナイーブさが沙慈の良い所でもございますし、弱いところでもある。でもそれら全てを内包しているキャラが「沙慈」で、だからこそ「ガンダム乗り」でもない彼が1stシーズンから出演している理由、ガンダムマイスターに出来ないことをするための最終兵器としての存在、それが沙慈の存在意味なのかもしれません。
 さてこの「ダブルオー」という作品は絵も綺麗、キャラも綺麗、ガンダムを始めとするマシンも綺麗に描写されておりますし、そこで語られる「平和論」もどこか浮世離れしておりますが、しかし作品世界を覆う「恐怖」という味付けがギリギリ本作をファンタジーにしないでいると思っています。そしてその「恐怖」の体現者が「サーシェス」でございます。
 彼が画面に現れた瞬間、理想を語る作品に「現実」が現れます。CVの藤原啓治さんの熱演もあって見事な「狂気」を体現したキャラでございます。仕事のためなら人を殺すことも国を滅ぼすことにも感情を動かすことなくやってのける。従来のガンダムであるなら「ブシドー」も「コーラサワー」もありでしょうが、この「サーシェス」というキャラは理想も夢も語るものはなにもない存在でガンダムという作品では実に特異な存在でございます。
 本作の好きなキャラを投票したなら色々なキャラに票は別れると思いますが、嫌いなキャラを選ばせたら多分ぶっちぎりでトップになるこのキャラを生み出したことが「ダブルオー」を現実との乖離を最低限に引き留めている理由かと考えております。
 正直この作品でSBにとって一番危険な存在はアロウズでもリボンズでも乙女座の彼(笑) でもなくこのサーシェスさまでありましょう。早く死なないかな・・・(笑)