機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争(終)

 全6話視聴終了。泣けて仕方がありません。
 「ガンダム」という名を冠してこういう派生作品を作る事の出来るオリジナルの懐の広さに、今更ながらに感心致しました。そしてそのことに甘えないで本作を作り上げたスタッフに感謝したい気持ちで一杯でございます。
 それにしても悲しい物語でございました。誰が悪いわけでもなく、それぞれが自分の果たすべき役目をした結果がアレなのですからやりきれません。バーニーは軍人としては優し過ぎる男で、だからこそアルに好かれ、その優しさ故に命を懸けて意味のない戦いにその命を差し出しました。もうね、この作品は「ガンダム」という枠だけで括るには惜しすぎるのですよ。
 意味のない、と書きましたが必ずしもそうだったとはいえません。状況の変化(サイド6への核攻撃が事前に阻止されたこと)を知らなかったバーニーとアルにとってそれはあくまでも意味のあった戦いでございました。男はただ己の信じるもののためだけに戦う、信じてくれる者のために戦う。バーニーは「アルを助けたい」というその想いのためだけに戦ったと信じたいものでございます。ですからラスト間際でバーニーの残したディスクで「俺が戦いたいんだ」というのは彼の優しい「嘘」ではないかと思っております。
 そしてラストシーンでバーニーのために涙を流してくれるアル。誰も知らなくてもアルが憶えていて、アルが泣いてくれたことが私にはとても嬉しいシーンでした。バーニーはアルにだけ憶えもらえればそれで十分なのですから。悲劇ではありましたが後味は最高でございました。
 椎名恵さんの「いつか空に届いて」「遠い記憶」は共に作品の雰囲気を見事に表した名曲でしたし、各キャラクター(特に「ハーディ・シュタイナー」以下サイクロプス隊の面々)も素敵なおじさんたちでございました。この作品を製作当時に観ていたら、また違った感想になったと思うのですが、歳を取ってから観る事ができ、それはそれで幸せだったと今は思います。
 非情な時代に心優しいまま生きて、歴史の狭間に倒れていった無名戦士たちに乾杯。