『びんちょうタン 参巻』

アニメを観てからマンガを購入しましたからどうしてもアニメに甘い評価をしてしまいがちですが、参巻を購入して考えが変わりました。アニメの出来が悪いと言うのではありません。ただマンガという表現方法には敵わなかったという思いが強くなったという事です。
アニメの成り立ちがどういった経由だったのか、そこら辺が部外者には分からないのでなんとも言い様がないのですが、改めて原作本を読んでいると(何度も書きましたが)諸般の事情があったのでしょうがアニメ版は「いかんせん尺が足りない」という結論しか出てきません。もちろん映像の美しさや、愛らしいキャラクターたちが動いている感動、声優さんの熱演、素敵な音楽などマンガでは表現できない素晴らしさがアニメ版にあったことは十分に評価できると思います。しかし本巻を読んで「時間」と言う制約の中で切り落とさなければならなかったエピソードの中に、この物語の核心があった事を改めて思い知らされました。
冒頭の「こころ」はアニメでは描かれなかったエピソード。でもこれはこの作品にとってとても重要なお話でした。何不自由なく暮らすことが当たり前だったクヌギたんの心の変化が描かれたこのお話には、アニメではスッポリ抜け落ちていた彼女の母親との交流が書かれています。このエピソードのあるなしでは物語の深みが全然違うのですが、致し方なかったのでしょうね。
この参巻では他に「手のひらの痛み」「代わりの子」「秋に咲く桜」でびんちょうタンクヌギたんの交流が丁寧に描かれています。どれも20ページ前後しかないのですが、しっとりとした味わいの掌編に仕上がっていました。この作品の良いところは行間(コマ間と言いましょうか)に詰まった作者の優しい眼差しであることを再認識させていただきました。
順調に行けば次巻は来年の4月頃でしょうか。待ち遠しいです。