蟲師 続章 第十三話『残り紅』

ギンコが山中で佇んでいる老女・みかげを見つけて、というお話。
これもまた解釈に困るお話でございまして、誰に焦点を当てるかでこの物語の印象はガラリと変わってしまいそうでございます。
みかげにとっては後悔が大きかった人生なのかもしれませんが、その事を思い出したのが死の数年前であったことを考えればそう悪い一生でもなく。
陽吉にとってもみかげと添い遂げることが出来たうえに、彼女の背負ったものを最期に降ろすことができたのですから概ね満足の行った人生だったのかもしれません。
さてアカネにとってはどうだったのかが問題でして、「帰って(還って」かな?)」これたのは幸いだったとしてもそこにはもう家族がいるとは思えませんし、友人たちは皆見知らぬ老人になっているのですからそれは幸せなのかどうか。
そもそもアカネ自身は他人を犠牲にしてまで帰りたいと願わなかったから今まで影として生きていたのでしょうから、陽吉の行為も彼の罪悪感を消すためだけで、本当にアカネのことを考えて影を踏んだのか。
…いや陽吉もアカネのことが心の何処かで引っかかっていたようでしたので、贖罪と助けたいという気持ちが交じり合っていたのでしょうね。
悲しく切なく美しい物語。それが私の結論でございます。