それでも世界は美しい 第12話(終)『帰還』

意地を張るトハラだったが、最愛の「弟子」の門出を祝って歌を贈り見送るのだった、という最終回。
どんな作品でも言えることですが物語におきまして「積み重ね」というのは重要でございまして、現在主流の1クール作品は最初からその部分で大きなハンデを負っております。
もちろん何事にも例外はございますし、最初から1クールに最適化されたオリジナルな作品であればこの限りではないのですが、やはり1クール内で収めるには難しい作品の方が圧倒的多数でございます。
特に本作のような恋愛物の場合その傾向が顕著のようでございます。
最終回の今回はトハラがもしかすると今生の別れになるかもしれない娘(実際には孫ですが)を送り出す親が万感の思いを込めて歌う場面がございましたが、もっと積み重ねてきたものを見せることが出来たならあそこは涙無くして見れなかったでしょうけど、圧倒的に積み重ねたものが不足しておりまして感動が薄れてしまい残念でございました。
もっと残念だったのはリビと会えない日が続いて悲しむニケがやっとのことで再会を果たし「会う度に恋が始まる」と自分の気持を確認するラストでございまして、会えない時間を描きませんとその「想い」の強さが伝わりきれない。
いや、推し量ることは可能でございますので意味は伝わっていたのですが、意味が伝わればいいのであるなら手間ひまかけて映像化する必要なんてなくなってしまう訳でして、マンガや小説で描ききれない「時間」を見せることが可能な映像作品の利点を自ら放棄しているように見えるのでございます、…大人の事情は分かるんですけどね。
恋愛モノは特に積み重ねが必要なジャンルでございまして、なぜならその積み重ねこそが恋愛の本質なのですから。
作品としては綺麗にまとめられておりまして、この辺は監督以下スタッフの頑張りだとは思いますが、であればこそもう少し彼らに時間を与えて頂きたかったと感じるのでございます。