屍鬼 #16『第悼と髏苦話』

屍鬼となり生きるためとはいえ他者の命を奪っている事に慚愧の念を感じている徹に、沙子が自身の過去を語って聞かせたお話。
生きるために他者の命が必要なら、過去に沙子がしていたようにその場限りの命を奪って姿を消す方が合理的でしょうし、現代の設定なのですから大都会でそれをしているうちは大して(?)問題にもならないような気がいたします。
狭い空間(閉ざされた田舎)でそれを行い、さらに起き上がった屍鬼たちを保護(教育?)している以上、住民との対立は避け難い訳ですが、そうせざるを得ない理由というものがなんとなく語られていたのかもしれません。
沙子が感じているのは圧倒的な孤独。おそらく家族然として振る舞っている正志郎や千鶴が傍にいても癒されることがないのでしょう。
だからその孤独を埋めてくれる、自分と同じ時間を永遠に生きてくれる屍鬼と巡り合うために「起き上がる」までの時間同じ場所にいなくてはならなないから、あえて危険を冒して閉鎖空間に留まっているのでございましょう。
う〜ん、感情を移入する対象がコロコロと変わります(笑) 前回までは追い詰められた敏夫や、理不尽に殺されて行く村人たちに心情といたしましては近かったのですが、沙子の話を観た後では沙子に近くなっておりました。
こうやって読者や視聴者の立ち位置を変えさせる目的は、本作の内容とは関係が無いのかもしれないのですが、人の心の節操のなさを自覚させるために作者が用意した「罠」なのかもしれませんね。
敏夫や沙子のように己の立場を自覚した存在ではなく、大量の死者が出ているというのに無関心な村人たちと同じなのだという「罠」…、考え過ぎか(笑)
昭退場?この容赦のなさが堪りません。