今年のまとめ

 今年も終わりそうなので各サイトで「ベスト&ワースト」の選定作業で賑わっております。人様の書かれるこうしたランキングを見るのは実に楽しいのですが、明確な選定基準を持っていない身といたしましては参加するのも難しいものでございます。
 基本姿勢といたしましては「見せて頂いたものは全て楽しい」「観続けられる作品は全て正義」という実にいい加減な物差し(笑)ですし、「バカな子ほど可愛い」という屈折した想いもございますから、そもそもランキング付けに向いていないのでしょうね。
 「オールタイムベスト」ってことでも、もう何十年もテレビアニメでは「海のトリトン」「宝島」「赤毛のアン」がトップスリーなんですから、その時代の変化に対応しきれていない思考回路には我ながら困ったものです。
 深く考えれば「好き」な作品なんかはいくらでも上げられるのですが、瞬間的に頭に浮ぶのはいつもこの3作品でございます。これは(書いていて恥ずかしいのですが)「多感な時代に観た作品」ということが大きいのでしょう。時代が違えば上げる作品もまた違ったものになる事は容易に想像が可能ですから。
 上記の3作品も、今の基準で視聴すれば色々と粗はあるのですが、それを補って余りある「恋」という感情がその地位を不動のものにしているのでございます。・・・新しい恋をするには歳を取りすぎてしまったということなんでしょうね(笑)
 それでも「今年のベスト」を書き残して置く事は、何年か経って多少は(自分なりに)意味があるかと考え記録しておく事にいたしました。「数年経ったあとでもう一度観たくなるだろう作品」「数年経っても視聴に耐えるだろう作品」という基準で。
 一番先に思い浮かんだのは東のエデンでございます。数年後には作中の設定やガジェットは陳腐化していそうですが、本作に監督が込めた「想い」や「理念」は多分今よりも顕在化しそうですし、なにより基本的に広義の「恋愛作品」ですから古くなる心配はなさそうでございます。
 映像表現や作画も十年くらいは「時のヤスリ」に負けない作りでございましたので、数年後に観る事で新たな発見もありそうなので。それにオリジナル作品でしたし。
 次に浮んだ作品は獣の奏者エリンでございます。本作はテーマが「生きる意味」といった普遍的なものでございますから、数年数十年経っても古くなる作品ではないでしょう。
 演出手法なんかはむしろ数年後に評価されそうですし、作画のレトロさと申しましょうかスタンダードさは「今」の視点ですと評価としては低かったりするのですが、これが逆に生きてくるような気がいたします。時代の流行りに流されない仕事は数年経った時こそ真価を発揮しそうな予感がいたしますので。
 三番目は化物語。この作品の場合演出とシナリオで「魅せた」訳ですが、アニメ表現の斬新さだけではなく青春期の不安定な心の動きを「怪異」に重ねることで「青春物語」として楽しく視聴できた作品でした。
 一抹の不安はこの演出手法に頼った作品が、多数のフォロアーを産み一番陳腐化しそうなことでしょうか。もっともこの手法が誰にでも駆使できるとも思えませんので杞憂かもしれませんね。
 四番目は大正野球娘。素材自体が現時点で「古い」というのはある意味では「強み」に転じるとも取れますし。真っ当で馬鹿ッ正直な青春アニメって大好きなんですよ(笑)
 キャシャーンsinsは年をまたいでおりますからどうしたものかと考えましたが、完結したのが今年なのでいいかな? 娯楽性は全くないも同然なのですが、作中で語られる生と死の禅問答(笑)はそれこそ普遍的な問題でしたから。この作品を観ていた「今」感じていことが、数年後どう変わっているのか。とても楽しみでございます。
 最後はこんにちはアン(笑) 普遍性という意味では多分これが一番だと思います。何十年後であってもこの作品は繰り返し放送されることになるでしょう。その分「今」という時代を表現していたアニメではありませんが。
 「今」と書きましたが、この作品の場合「赤毛のアン」と比べれば表現として「ライト」でした。「今」の時代に高畑さんのような「間」や「空気」を意識した演出方法が受け入れられるかと考えますと、これはこれで十分「今」なのかもしれません。
 テレビアニメの場合「全体としてはつまらなく感じていても、この一本は見逃せない」「作品としては疑問の付く内容だったけれどあの作画や演出を観れただけで幸せ」なんてこともありますし、大体「俺の観たアニメなんて全体のほんの一部」である以上評価に意味なんてあるのかどうか(笑) ちなみに私の中に明確な基準がありませんので「ワースト」はございませんでした(笑)
 番外で今年最大のニュースは「ゴンゾの倒産」でございました。世間的にはゴンゾの評判はあまり芳しいものではないようですが、「サムライ」「岩窟王」「ドルアーガの塔は好きな作品でしたし、「咲」や「パンツじゃないから恥ずかしくないモン!」(いや、タイトル書きましょうよ>俺)のようなコメディタッチの作品も作れる貴重な会社でしたから残念です。
 会社がなくなっても「人」が消える訳ではありませんが、ああいった「挑戦的な」作品を作る会社が無くなってしまったというのは、本当に残念。でも世の中はそんなことを気にもせず流れていくんですけどね、・・・無情です。
 さて今年はこれで終了、良い御年をお迎え下さいませ。・・・そして明日も更新はあるのです(笑)