ブレンパワード 第26話『飛翔』(終)

 煙に巻かれたようでいて、それでも胸の奥に温かいものが溢れてくるような、とても富野監督の作品とは思えない素敵な最終回でございました(笑)

 遂に地上から完全に浮上するオルファンを見て不安に駆られるノヴィス・ノアのクルーや地上の人々。そこにオルファンへ向かった勇と比瑪以外のブレンたちが帰還してきた。二人はオルファン内部で、疲れたブレンが花からオーガニックエナジーなるものを受け取り元気になってゆく様を見て、絶対に諦めないと誓い合う。
 一方グランチャーはエナジーをオルファンに吸い取れれて硬化していた。そんな中バロンを乗せたバロン・ズゥが勇たちの攻撃に向かう。「ジョナサンのために!」と戦うバロンの正体はアノーア艦長だった。子を想う母の心がバロン・ズゥを「ハイパー・バロン・ズゥ(笑)」にさせて勇たちを窮地に陥れるが、彼女のエナジーもまたオルファンに吸い取られて力尽きてしまうのだった。
 オルファンの脅威の前にちっぽけな「人」ができることをしようと人々は手を取り合い思いをひとつにすると、その想いに応えるようにオルファンは自身の中にいた全ての人を地上に送り返し空に飛翔するのだった。(第26話「だいたいあってる」あらすじ)

 考えますと、別に富野監督のこれまでの作品と異なった主張をしているわけではございません。ただ私がこれまでに観て来ました氏の作品は、どちらかといえば「斜に構え」ていたと思います。多分ストレートな物言いが照れくさかったのではと邪推しておりますが、歳をとられてそうした照れがなくなったのでしょう、本作は珍しく「シンプル&ストレート」なおはなしでございました。
 「人は分かり合える」「人はもっと進歩できる」という単純な主張に、今なら首肯できますし、そしてこれは監督の願いでもあるのだと思いました。とはいえ、随所に監督の皮肉屋としての顔が現れておりましたし、今回も最後だというのに研作に「人間全体が生物的な、原理的なものを忘れ、どこかで間違ったのです。オルファンはこの姿を現す事で人間の知恵の、底の浅さを教えようとしているんでしょうな」などと語らせておりました。うん、監督この頃もお元気だった証拠でございますね(笑)
 傑作とは申しませんが高いレベルの作品だったと記憶しておきたいと思います。